淡々と・・・

淡々と過ぎていく日々、心にとまったひとこまを写真と短文で綴っています。

水鏡

晴天の朝ほど日の出時の気温は、低くなりま

す。

まして風もない田んぼは、鏡のような水面を

保って太陽が、山の向こうから昇って来るの

を静かに待っています。

薄暗い中、散歩に出て行く私に母は怖くない

のか?と尋ねます。その度に怖くない、と答

えます。強がっているわけではなく、正直な

気持ちです。今日も静かで美しい光景に出会

えると思うとワクワクしながら歩いてしまい

ます。

日の出の時刻は、夏至に向かって日に日に早

くなっています。夜と朝の間の曖昧な時間は

私にとって不思議と落ち着くのです。刻々と

色調を変えていく周囲の風景の一瞬一瞬が美

しく保存しておきたいと思うのですが、それ

は無理な話。写真に撮ってみても後から見返

すともっと美しかったはず、と失望するばか

りです。

美しい田んぼの水鏡は、年々太陽光パネル

とって代られています。太陽光から作られる

電気は確かにある面ではエコなエネルギーで

す。でも、多分10年ほどしたらパネルは交換

しなければならなくなるでしょう。そうなっ

た時、膨大な量の産業廃棄物の処理にどれほ

どのエネルギーを必要するのか私は知りませ

ん。

水鏡に映る太陽と後ろに並ぶパネルを見なが

ら将来の重荷に心が揺れるのです。

マツバウンラン(花)

日当たりの良い芝生や河川敷ではか細いマツ

バウンランの群生が、紫色の霞のように煙む

って見えます。松葉のように細い茎でか弱そ

うに見えますが、実は大変繁殖力の強い植物

で花が咲いてから種をつけるまでがあっとい

う間です。その上、栄養価の乏しい造成地で

も日当たりさえ良ければグングン成長するた

め、外来生物として問題視されています。

マツバウンランは、ランという名前がつきま

すがいわゆるラン科の植物ではなくゴマノハ

グサ科の植物です。同じゴマノハグサ科のウ

ンランに花型が似ていることと葉が、松葉の

ようなことからこのような名前になったよう

です。

細い茎にずらりと並んで咲く花は大変小さく

グッと近寄って見ると中心部が白いことがわ

かります。紫色は、この時期季節を同じくす

ヤマフジやキリの花の紫色に色調が良く似

ています。

晴天の田舎道を歩いていると地上ではマツバ

ウンランが、頭上ではキリやヤマフジの花が

紫色の煙をたなびかせて1年で最も美しいこ

の辺りの風景を彩ることにそれぞれ一役買っ

ているのです。

 

tantan10.hatenablog.com

ヤマフジ(花)

今年も雑木林の木々にヤマフジの薄紫色のベ

ールが、掛かる季節となりました。この辺り

で一番良い季節です。

ヤマフジのベールが掛かる場所は大抵、日当

たりの良い南か西の斜面です。少し開けた沢

沿いの場所では山の上から水面スレスレまで

花房が下がっており、風が吹くとフジの花吹

雪が見られます。

花吹雪と言えばてっきりサクラだと思ってい

たのですが、ここではヤマフジの花も風に乗

って散っていく様子を目にすることが出来る

のです。

風に舞い上がったヤマフジの花びらは、しば

らく空中を漂った後、沢の流れに舞い降り今

度は花筏となって水面を漂っていきます。

風に揺れる花房と舞い散る花、水面を流れて

いく花びらはいくら見ていてもあきることの

ない美しい光景です。おまけに寒くも暑くも

ないこのところの気候は、絶好のお花見日和

です。

いつもこの地の不平不満ばかり述べている私

ですが、この時期だけは何処へも出かけない

で薄紫色の滝が流れ落ちるような光景を心に

焼き付けておきたいと思うのです。

 

tantan10.hatenablog.com

アマドコロ(花)

初秋にママコノシリヌグイの花が咲く藪に行

くとアマドコロの花が、朝露に濡れながら咲

いていました。

それほど広い範囲ではなく、3m四方くらい

の斜面にこの弓なりの茎が5本くらい確認出

来ました。昨年も1本見かけたのですが、少

し時間をおいて再訪したら見失ってしまって

終わったのでまた会えて良かったです。今年

は、季節が少し遅れているのでそのお蔭で会

えたのかもしれません。

アマドコロは、ナルコユリという植物と大変

良く似ています。両者ともキジカクシ科アマ

ドコロ属の白い釣鐘型の植物で、瓜二つのた

めなかなか判別が難しい植物です。一応茎を

触ると脈があってデコボコしているのがアマ

ドコロ、滑らかな円柱状の茎がナルコユリ

いわれているので触ってみたらデコボコして

いたのでこれはアマドコロだと思います。

ついこの前までこの斜面は、オオイヌノフグ

リやヒメオドリコソウなどの草丈の低い植物

に覆われていました。ところが、今はシダや

ヒメジオンなどの草丈の高い植物にとって代

られ地面も見えなくなっています。

早朝は、手がかじかむほど寒い中でも植物た

ちの世代交代は着実に進んでいるのです。

 

tantan10.hatenablog.com

シロバナタンポポ(花)

早春の頃、探してもなかなか見つからなかっ

タンポポの花は、今は到る所で咲いていま

す。

その多くは、帰化植物である西洋タンポポ

すが、少し足を延ばした沢沿いの道を歩くと

私の住む地方でも日本タンポポをまだ見るこ

とが出来ます。

先日、いつものように沢沿いの道を歩いてい

ると中心が黄色で周囲が薄い黄色のシロバナ

タンポポがたくさん咲いていました。

いつもは沢沿いの道を歩くのは、もう少し気

温が上がった頃なのでその頃にはもう花が終

わっていたようです。まさか、シロバナタン

ポポがこの辺りでも咲いているとは全く気付

かずにいました。

植物図鑑などには、シロバナタンポポは西日

本の方に多いと書かれていますがその後、分

布域を広げたのでしょうか?1株だけでなく

雑木林と沢の間の道沿いに点々と咲いていた

のでこの辺りに定着して数年は経っていると

思われます。

一説では、人工的な環境の所では西洋タンポ

ポが優勢、昔ながらの日本の自然環境が残っ

ている所では日本タンポポが生きながらえて

いると言われています。

風に乗って新天地を求めて旅して来たシロバ

タンポポが、この地で末永く安住してくれ

るといいなぁと思っています。

↓<シロバナタンポポ3兄弟>

シロヤマブキ(花)

シロヤマブキの真っ白な花は、少し薄暗い場

所でもハッとするほど目を引きます。

普通のヤマブキの花が濃い黄色なのに対して

シロヤマブキは雄しべの花粉まで限りなく白

に近づこうとしているかのように見えます。

シロヤマブキは、つい1ヶ月前まで枯れ木の

ような白っぽい樹皮でした。ところが、一雨

ごとに芽吹き全体が緑に覆われた頃、次々と

白い花を開き始めたのです。

日当たりの良過ぎる場所を嫌うシロヤマブキ

は、他の樹木の下などに植えられています。

適度に日が遮られた場所で白い清楚な花をつ

けて咲く様子は、海外でも人気がありアメリ

カなどでも盛んに公園や個人の庭にも植えら

れました。ところが、1輪の花にほぼ確実に

4個の種をつけるため、その種が勝手に別の

場所で繁殖し始めると元々ある植物を駆逐し

てしまうと問題になり始めました。

人間とは自分勝手なものです。花が美しいと

植えたのに殖えてもらっては困るというのは

命あるものに対して無責任過ぎる行いです。

シロヤマブキの英名は、Black jetbead 黒い漆

黒のビーズ玉。この黒い玉1つ1つが命の源

であることは、十分わかっていたはずなので

す。

 

tantan10.hatenablog.com

ボタン(花)

久しぶりに車ではなくバスに乗って出掛ける

途中、住宅街のはずれの庭でボタンの花が満

開なのに気がつきました。

いつもはこの庭の手前で道を曲がってしまう

のでここにボタンが植わっていることも気が

ついておらず、ましてや花が咲いているころ

前を通ることもありませんでした。車窓が高

い位置にあったことも幸いだったようで見下

ろす感じでよく見えました。ボ~っと外を眺

めていたところに赤紫色のボリューム満点の

花が飛び込んできました。

次の日、母を誘ってもう一度歩いてじっくり

見に行くと立派な木には何個も花がついてお

り、既に花びらが地面に散っているものもあ

りました。直径30㎝くらいの花はまさに花の

女王といった感じです。このところの晴天続

きでいっきに咲いたようでした。

心ゆくまでボタンを見終わると暑いので近所

のコンビニでソフトクリームを食べよう、と

いうことになりました。こういう時、女同士

では話がまとまるのが早いです。行儀の良い

父はあまり立ち食いを好みません。

カンカン照りの下、風に吹かれて冷たいもの

を食べられる日がまた来たなんて、何だかと

ても嬉しい北国の昼下がりでした。

カリン(花)

今年は、近所のカリンの花がなかなか咲きま

せんでした。

午後からしか直射日光が当たらない場所に植

わっているせいもあるのかもしれませんが、

他のカリンの木は、咲き出しても一向に花が

開きそうにないので心配していました。

カリンの花芽は、モクレンなどと違って咲く

直前までほとんど目立ちません。特に、私の

住む地方は寒いので2週間前くらいまで小さ

な葉が出ているだけで色付いた花芽が確認出

来たのは連休の直前でした。やっと初夏を感

じる気温が続くようになるとピンク色の花芽

が目立ち始め、蕾が見えるようになりました

が、そこからまた1週間ほどかかりやっと開

花となったのです。

カリンは、そもそも寒さには強い木です。も

しかするとだからこそ寒さに用心深いのかも

しれません。暖かくなったかなぁ、と思わせ

ておいて度々戻って来る寒気が大事な花を傷

めないように警戒して何重にも葉でくるんだ

奥にかくまっているのかもしれません。

花というものは、植物にとって宝石のような

大事なものでしょう。大事に慈しまれたカリ

ンの花を見せてもらえるのは幸運なことそん

な風に感じています。

 

tantan10.hatenablog.com

エンレイソウ(花)

早くしないと今年のエンレイソウの花が終わ

ってしまうと思って、母と一緒にいつものス

ギ林を訪ねました。

スギ林の中は適度に湿り気が保たれており、

晴天続きで乾き切っている外の世界とは別世

界のようにヒンヤリしています。

昨年と変わりはないかしら?と少しドキドキ

しながら林に入っていくと、今年も大きな葉

の真ん中に地味な暗褐色の花をつけて咲いて

います。いつも2本一組になって出る葉はし

っかりとしており、昨年より少しだけ株も殖

えているようで、嬉しい。

母は、昨年見ていないのでずいぶんと地味な

花だねーと言いながら感心しています。本当

は別の場所でエンレイソウの花自体は見たこ

とがあるのですが、そのことはすっかり忘れ

ている様子。

周囲の環境を確認すると昨年よりササの類が

ずいぶん殖えているのが少し気にかかります

が、他の場所ではすでに終わってしまったニ

リンソウがまだたくさん咲いていてこの辺り

は他より一段気温が低いことがわかります。

ほとんど人が入らない田んぼの横に取り残さ

れたような場所ですが、来年、再来年と少し

ずつ株が増えていったらいいなぁと一安心し

ながら家路に着きました。

 

tantan10.hatenablog.com

シャガ(花)

近所の家の前を通りかかるとシャガの花が咲

いていました。

シャガは、アヤメ科の植物でアヤメに良く似

た白地に紫色の模様の入った花をつけます。

大昔に中国から日本に帰化した植物と言われ

ています。自然林で見られることはほとんど

なく、シャガが生えている場所は今は寂れて

いてもかつては、人の手が入った場所である

証拠だと言われています。

シャガは少し日陰の湿った場所を好み、群生

しています。光沢と厚みのある剣のような葉

を持ち、アヤメ科の植物では最も早く花を咲

かせ始めます。シャガ、ジャーマンアイリス

アヤメ、ハナショウブといった順番で咲いて

いく感じです。シャガよりもイチハツという

アヤメ科の花の方が先に咲くとものの本には

書かれていますが、私の周辺ではシャガが一

番早い気がします。

アヤメより随分小さな花で、白地に紫色とい

う配色のせいもあって控えめな印象を受けま

すが、日本にあるシャガは、種が出来ないた

め株分けから増やされた同じ遺伝子を持つク

ローンだと言われています。

今や日本中にたくさんのシャガがあることを

思えば、長い年月廃れず愛されてきた花であ

る証でしょう。

 

tantan10.hatenablog.com