淡々と・・・

淡々と過ぎていく日々、心にとまったひとこまを写真と短文で綴っています。

イソギク(花)

山々はほぼ茶色くなり、雲は分厚い灰色を帯

びています。

時折り弱い日差しは射しますが、空気は重た

くひんやりとしています。木々の紅葉も盛り

を過ぎ、咲いている花もほとんどない中、イ

ソギクの黄色い花だけが目立ちます。

イソギクは、名前の通り元々は海岸に自生す

海浜植物の1種です。直射日光や乾燥にも

強く、病害虫もほとんどつかないため庭植え

でも重宝され園芸植物として最近は人気があ

ります。葉の裏には細かい産毛が生え、それ

が表側の端にまで回り込んでいるため上から

見ると葉の縁が白くなっているように見える

のが特徴です。

また、普通キク科の植物は花の周囲に舌状花

と呼ばれるヒラヒラした花びらがつきますが

イソギクにはそれがありません。ただ、一般

的な園芸品種のキクと簡単に交雑し易いため

黄色い中心部の周りに短い花弁をもつ花も時

々見かけます。それらはハナイソギクまたは

イエギクと呼ばれています。

ラジオを聞いていたら「今日の誕生日の花は

イソギクです」というアナウンスが流れ「あ

あ、やっぱり今どきの花なのだな」と思いま

した。

イソギクの花の明るさは、薄暗い初冬の風景

の救いです。

 

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ビワ(花)

夏にたくさんの実をつけていたビワの木を再

び訪ねてみました。

まだ青い蕾だろうと思っていたところにはす

でに開き始めた花も見られ、日当たりの良い

田んぼの真ん中で晩秋の日差しを浴びていま

す。かなり立派な木でオレンジ色の実がたわ

わに実っていたのですが、今はたくさんの蕾

と花がついた姿に変わっています。

あのたくさんの実はどうしたのだろう?この

木は隣の農家の持ち物なんだろうか?などと

とりとめのないことを考えながら花を眺めて

いました。

ビワの木の後ろにはイチジクの木が4、5本

並んでおり、農家の庭先にはもみ殻が山にな

って摘まれているのが見えました。その後ろ

の納屋のような建物の壁にはたくわんにする

らしき縄で結んだ大根が何本も干されていま

す。1年分の収穫を終えてその収穫物を余す

ことなく使って冬に備える営みが伺えるよう

な風景でした。

たくさんのビワがなる木も素敵だけど地に足

のついた農家の生活は、疫病が流行ろうがミ

サイルが飛んで来ようが右往左往する必要が

ない確固たるものを感じられ、頑丈な建物よ

り頼りになるような気がしました。

 

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ツルウメモドキ(実)

今年は庭のツルウメモドキの実が、たくさん

なりました。

小さな盆栽仕立てだった木も地植えにしてす

っかり根が馴染んだのでしょう。

ツルウメモドキは、晩春にわずかに緑色を帯

びた小さな白い花を咲かせます。雌雄異株の

ため、実がつく雌株は花が終わると実をつけ

夏の間その実は緑色のまま過ごしますが、気

温が下がり始めると黄色く色づいてきます。

黄色い果実は、乾燥が進むと3つに裂けて中

から朱色の実が現れます。黄色と朱色のコン

トラストは、たいへん鮮やかで冬の野山をし

ばらく彩ります。

ツル性の植物であるツルウメモドキは、通常

は周囲の木々にからまりながら成長していき

ます。我が家では全く花が咲かないハナミズ

キの木にからませていますが、真っ赤に紅葉

したハナミズキの葉と黄色い実の取り合わせ

もなかなか良いと自己満足に浸っています。

秋になって落葉したツルウメモドキは、から

まっていた木からツルをほどくと簡単にリー

スを作ることも出来ます。

雑木林の中には、時折ボリュームたっぷりの

ツルウメモドキがあります。でも、それらは

冬の野鳥たちの貴重な食料なので眺めるだけ

にしています。

 

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今日の空110

自分自身のコロナワクチン接種の4回目が終

わったと思ったら、両親の5回目の接種券が

送られてきました。

最近はもう高齢者の接種は、予め日時が決め

られていて都合が悪い場合はキャンセルして

自分で予約を取り直してね、といった感じの

やり方です。指定された日時は10日後。また

予約を取り直すのも面倒なので、指定された

会場へおとなしく3人で向かって済ませて来

ました。

指定された場所は家から遠く、ちょっとした

ドライブになります。幸い天気も良かったの

で外の空気は冷たいですが、車内はポカポカ

の温室状態。前回はザーザー降りの雨で会場

の体育館の駐車場はドロドロでしたが、急遽

アスファルトを敷き詰めたようで見違えるほ

どにきれいに整えられていました。

問診をする医師に向かって母が唐突に「あと

何回受ければ良いのですか?」と質問すると

医師は投げやりに「さあ、国が決めることで

すからわかりません」と答えていました。

考えて見れば、短期間にこんなに何度も体内

にウイルスを注入して大丈夫なの?と思うの

は普通の感覚です。

モヤモヤとした雲が浮かぶ青空は、私の頭の

中で渦巻く言葉に出来ない想いのようだと感

じながら家へ入りました。

カリン(実)

春に可愛い花を咲かせたカリンに今、黄色い

大きな実がついています。

花が咲いてから半年過ぎ、葉は赤や黄色に色

づいてだいぶ散ってしまいましたが実はまだ

枝についたままです。

今年は花数の割には実付きが悪く、たった3

個しか残っていませんがその分大きな実がな

っています。一方少し離れた場所のカリンの

木にはたくさんの実がなっていましたが、風

が吹いたらほとんどの実が地面に落ちて無残

な姿をさらしています。この家は先代の住人

が亡くなった後、空き家になっており落ちた

実は放置されています。有益なカリンの実が

朽ちていくのをただ見ているのは、何だか心

苦しい。

家の近くのカリンの木は道端に生えていて誰

のものかもわからず、熟して自然に落ちても

誰も見向きもしません。そのため、毎年拾っ

てカリン酒にしています。1年間焼酎と氷砂

糖で漬けて次のカリンが実る頃、種や実を漉

して飲み始めます。最初は透明だった液体が

1年で琥珀色のとろりとした甘酸っぱいお酒

に変わって美味しくなります。

カリンはノドに良いと聞きますが、春の花と

秋の実を思い浮かべながら飲むカリン酒は特

別な効能があるような気がします。

 

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フユザクラ(冬花)

そろそろか、と思いフユザクラの様子を見に

行きました。

一瞬まだ早かったか?と思いましたが、よく

見れば小さな花がポツポツと咲いています。

一人でオオー!と喜びをかみしめつつ再度上

から下までゆっくりと眺めると一輪だけ下の

小枝にも儚げな花が開いています。風がおさ

まるのを待ってそっとシャッターを切りまし

た。

フユザクラは、春と秋の年2回花が咲く性質

のサクラです。秋に咲くのは花芽のうちの3

分の1といわれていますが、真冬でもパラパ

ラと断続的に咲いているのを見ることもあり

ます。

マメザクラとヤマザクラが自然交配して生ま

れたといわれているフユザクラは、ソメイヨ

シノなどに比べると華奢な樹形で全体的にこ

じんまりしています。モミジが色づく頃から

咲き始め、花は春に比べると地味な印象を受

けますが何とも言えない可憐な感じが好きで

毎年咲くのを楽しみにしています。

サクラの仲間は他の木々に比べて落葉するの

が早く、フユザクラの枝にももう葉は残って

いません。周囲のモミジがいよいよこれから

燃え立つような色に染まり始めている中、小

ざっぱりと質素な姿は何だかとても清々しく

感じられるのです。

 

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イチョウ(黄葉)

そろそろこの辺りではイチョウの黄葉もピー

クを迎えています。

イチョウの手前には柵があっていつもは、柵

に入らず見ています。でも、あまりにも黄色

く色づいているので下から見たらどんな風か

興味が湧いて木の根元から上を見上げてみま

した。

逆光で見る幹は、黒々として黄色い葉の中で

クッキリと浮かび上がって見えます。太陽の

光を透過した葉は金色に見え、それが風で煽

られるとキラキラ光って見えました。

樹齢25年くらいになるこのイチョウも今や、

すっかり大人の木です。植えたばかりの頃は

ちゃんと大きく育つのだろうか、と心配なほ

どヒョロヒョロしていましたが、幹の一番太

いところは直径25㎝くらいになり、ある種の

風格も出てきました。

木がしっかりしてくると気になるのは、この

木に実がなるのかどうかです。イチョウは雌

雄異株なので雌の木にしか実はなりません。

毎年春には注意して観ているのですが、まだ

花が咲いているのを見たことがありません。

樹高が20~30mくらいになると花をつけるそ

うなのでそろそろ花が咲いても良い頃だとは

思っているのですが来年こそは、と期待して

います。

 

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モミジ(紅葉)

今年の秋は、雨が少ないためモミジの色も少

しくすんで見えます。

毎年見事に色づく雑木林のモミジの並木もよ

く見ると葉が乾燥してチリチリに縮れている

ものがあります。毎年同じように紅葉してい

るように見えても実は、一度として同じ色づ

き方はしていないのです。

並木のモミジは、ほとんどがイロハカエデで

す。春、暖かくなると明るかった雑木林をみ

るみる緑色の世界に染め上げていった場所が

今、日に日に赤く染まっています。

先日、ニューヨークのセントラルパークの紅

葉の様子を伝える記事を見ました。彼の地の

紅葉は、ほとんどが黄葉であって葉が赤くな

る木は少ないと写真入りで紹介していました

が、確かに写真に写った風景は黄色が基調に

なったものが多かったです。北米大陸にもメ

イプルシロップの原料を採るサトウカエデの

木が多いはずですが、赤というよりオレンジ

色が強い紅葉です。

にもかかわらず、カナダの国旗のカエデは赤

ですが、これは赤い色に色々な意味を込めた

ためなのかな?と想像しています。

赤いモミジが私たちを惹きつけてやまないの

も、赤という色にどこか気持ちを高ぶらせる

効果があるからなのでしょう。

 

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サザンカ(白花)

今年も近所の公民館の庭のサザンカの花が、

咲き始めました。

丸い蕾のうちは一番外側の花弁がほんのりピ

ンク色に染まっているのに、花が開くと中の

花弁は白ばかりになっているのが不思議。

花色が白や淡いピンク色のサザンカは濃いピ

ンク色の品種に比べて寒さに弱く、真冬にな

るとこの辺りでは茶色くなって腐ってしまい

ます。よく見かける濃いピンク色の品種は、

真冬でも暖かい日を選ぶように少しずつ咲い

ているというのに。

サザンカは、元々西日本以西に自生する常緑

小低木で原種は白い花だそうです。今、東日

本で主流になっている濃いピンク色の花は、

実は品種改良されて出来た後発組とのこと。

白花系のサザンカが寒さに弱いのは、原種の

血を濃く受け継いでいるためなのです。

サザンカとツバキは、同じツバキ科の植物で

八重咲きの品種は大変よく似ています。ツバ

キの方が花期は遅いものが多いですが、それ

も品種によってまちまちで秋から咲き始める

ツバキも時々あったりします。

両者の最も簡単で確実な見分け方は、花の散

り方です。ハラハラと木の足元に花弁が散り

敷いているようでしたら、それはサザンカ

花なのです。

 

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コムラサキシキブ(実)

コムラサキシキブは、雑木林に自生するムラ

サキシキブを品種改良して作った園芸品種で

す。

ところが、今ではコムラサキシキブのことを

ムラサキシキブと呼ぶようになっている場面

にしばしば遭遇します。

コムラサキシキブは、ムラサキシキブより木

の高さがグッとコンパクトにもかかわらず、

枝の節々にたくさんの紫色の実をつけます。

多くの木が赤や茶色の実をつける中で紫色の

実をつける木は大変珍しく、なんとか庭木で

この美しい実を楽しみたい、と昔の園芸家が

苦労して今の形に作り替えていったのでしょ

う。

現代のようにバイオ技術のなかった時代、植

物の品種改良は大変長い時間を必要としたこ

とでしょう。今年の結果が思わしくなかった

場合、また次の年までチャンスは巡ってこな

いのですから。

晩秋の庭で美しく光る紫色の実は、名前も残

っていない園芸家たちの長い努力と時間の賜

物です。

私たちは植物に限らず、多くの先人たちの恩

恵に浴して豊かな時間を過ごすことが出来て

います。このことをいつも心の片隅に置いて

過ごしたいものだ、と紫色の実を見ながら思

っています。

 

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