ビワ(花)
今年も寒い中ビワの花がひっそりと咲いてい
ます。
濃い緑色の分厚い葉は艶々として寒さに強そ
うですが、花は産毛に守られた蕾からゆっく
り時間をかけて開きます。象牙色の花は、地
味で高い場所に咲くとほとんど人に気づかれ
ることなく終わってしまいます。
私は、ビワの実が大好物なので木を見つける
とついつい観察してしまいます。あの瑞々し
い、甘くてちょっと酸味の感じられる果実を
思う存分食べるのは子供の頃からの夢です。
今よりもっと南の地方に暮らしていた頃、ビ
ワは結構身近な木でした。梅雨入り直前の蒸
し暑い空気を感じるようになると、民家の庭
先から伸びた枝先にビワの実を見かけること
はごく普通の風景だったのです。自然にまか
せてなった実は、粒が小さくそれでも甘いよ
うでカラスたちが群がって食べていました。
雪がしばしば降るこの地方に来てからは、実
がなっているビワの木を見たことはありませ
ん。それでも来年こそは、子孫を残せるので
は?と花を咲かせ続けるビワを見ていると健
気で愛おしいと思うのです。