イヌタデ(花)
しばらく続いた気温の高い秋もとうとう終わ
りが見えてきたようです。
何度も刈られてはまた復活するイヌタデの草
むらも、もう刈られることはないでしょう。
その代わりあと1ヶ月もすれば霜が降り、赤
く染まった草モミジとなって姿を消してしま
います。
イヌタデは1本だけ生えていることはなく、
いつもある程度の集団で生活しています。初
夏から晩秋までこの集団の中で多くの生き物
が生活し、命を育んいます。秋の野を歩いて
いて聞こえてくる静かな虫の声も大抵はこの
草むらの中からです。
イヌタデは、食用になるヤナギタデに対して
役に立たないタデということから付いた名前
です。刺身のツマや鮎の塩焼きに添えられる
タデ酢に使うヤナギタデに比べて、辛味がな
く食べられないことはないけれどこれと言っ
て特徴のないどこにでも無数にある草という
見下げた気持ちが込められた名前。
秋の日は釣瓶落としというように日に日に暗
くなる時刻は早くなり、生き物たちの気配も
薄れています。イヌタデのベットタウンで生
活していた小さきものたちの冬の準備が完了
したことを見届けて野原はベージュやグレー
の世界に還っていきます。