ヤクシソウ(花)
すっかり華やかな色がなくなった山里で唯一
明るい色を放っているのは、ヤクシソウの花
です。
ヤクシソウが好むのは山の少し乾いた斜面で
す。花の形は春に咲くニガナに似ていますが
ヤクシソウは秋に花を咲かせ、また葉の形が
ニガナに比べて幅広いのですぐに見分けるこ
とが出来ます。
花は咲き終わるとダランと垂れ下がり、その
後綿毛をつけた種に変わります。種は本格的
寒さが来る前に発芽して小さな苗で冬を越し
ます。このようなタイプの植物を越年草と呼
びますが、越年草の多くが少し乾いた土地を
好むのには訳があります。
この辺りのように冬が厳しい場所は、水分の
多い場所は冬の間凍ります。池や沼はもちろ
ん土も12月~2月までは土の中の水分が凍り
ます。従って、もしそこに生身の植物が生え
ていたら細胞内の水分も凍って破壊されてし
まいます。そのことを知っている越年草たち
は、出来るだけ水分の少ない乾いた場所を選
んで冬を越すのです。
秋に芽を出しておけば、春に種からスタート
する他の植物より優位に立てます。厳しい冬
を知恵で乗り越える越年草のしたたかな戦略
には学ぶべきところ多くあります。