イロハモミジ(実)
すっかり葉を落としたイロハカエデの枝を丹念
に見ていくと所々、プロペラのような翼を持っ
た種が残っていることがあります。
これらの種は、風が吹く度に親木を離れて旅立
っていきます。あるものは、親のすぐ根元に着
地し、また、別のあるものは、強い風が吹いた
日に遠くまで飛ばされて全く違った環境で根を
張り始めます。
イロハカエデには、人間のような意志はないは
ずです。種は偶然落ちた場所で発芽しているだ
けです。多くは親木の根元でたくさん芽を出し
て、小さいながらも秋には親と同じように健気
に赤く紅葉しています。しかし、ポツンと芽を
出している若いイロハカエデを見ることがあり
ます。そんな木を見つけると、この木は冒険者
なのだなぁと思います。
風に乗って旅をしてたどり着いた先は、必ずし
も種にとって快適な場所ではないかもしれませ
ん。途中で枯れてしまうかもしれません。
小さな種の中に大きな勇気を見るような気がす
るのは、私が冒険に憧れているからなのかもし
れません。