ヒメコウゾ(花)
段々と暗くなりつつある雑木林の林縁でユニ
ークな形の花を咲かせているのは、ヒメコウ
ゾの花です。
色は暗い赤紫色で顕微鏡で見るウィルスのよ
うな形の方が雌花、丸い粒々が集まった球形
のものが雄花の蕾です。雄花は開くと中から
小さな白い花がいくつも現れ花粉を散布しま
す。
ヒメと名前がつくだけあってヒメコウゾは、
それほど大きな木にはなりません。太さもほ
どほどで同じ科のクワノキの樹形に良く似た
感じです。
ヒメコウゾは、雑木林の中で花はほとんど目
立つことなく咲いています。余程物好きな人
以外は、目もくれない存在なのではないかと
思われます。
でもこの辺りがいよいよ暑くなる頃、緑色に
染まった木々の間で朱色に耀き存在感を増し
出すのがヒメコウゾの実なのです。
花の頃を知らない人にとって、急に現れたこ
の美しい果実はいったいどこから来たのだろ
う?と疑問に思うものです。現に私もそうで
した。
自分に見えていないだけでそのもの自体は、
以前からすぐ側に存在していたというのに。
ヒメコウゾの花は、人間の見るという行為が
いかに脳に支配されているかを気付かせてく
れるものなのです。