白露
砂漠地帯にお住まいの人が聞いたら怒られそう
ですが、もう雨にはウンザリです。
一日中降っているならあきらめもつくのですが
青空がのぞいたので、期待して洗濯物を干すと
干し終わった頃ザーっと降ってきて、慌てて取
り込むとまた晴れてくるという思わせぶりな天
気が8月の終わりから続いています。
いったいここの天気はどうなっているの?
とにかくクルクルと天気が変化して振り回され
る生活に疲れています。
気候が変わったのなら、サンルームのような
物干し場を用意するなり、乾燥機を買うなり
生活を変えていかなければならないのでしょう
が、原始的な生活スタイルからなかなか脱却
出来ない老人世帯です。
20年近く前、両親がトルコに旅行に行った帰
りの飛行機から見た光景を度々、聞かせられ
ます。西から日本に向かっている間、隣国上空
までは、ずっと茶色い風景だったそうです。
でも、日本上空に入ると、一面緑で覆われた
風景に変わったのが印象的だったとのこと。
災害が起こるほどの雨は、困りますが、朝露が
たっぷり付いた草の葉を見て自分を戒めた白露
の朝でした。
ガガイモ(花)
荒れ放題の道端に今年もガガイモの花が
たくさん咲いています。
ガガイモは、遠くから見るとヘクソカズラに
似ていますが、近づいて見ると花には細かい
毛がびっしりとはえています。薄紫から茶色
の花色は地味ですが、雄しべと雌しべが合体
した星型の花はよく見ると可愛いです。
この花は、花のサイズに似合わない大きな実
をつけると聞いているのですが、昨年は同じ
場所で実を見ることは出来ませんでした。
古い言い伝えによれば、大国主命(オオクニ
ヌシノミコト)が、国造りをする時、少彦名命
(スクナヒコノミコト)という小人の神様が、
ガガイモの種のサヤで出来た小船に乗ってや
って来たとという話があるので、是非、実を
見てみたいと思っているのですが、はたして
今年は見ることが出来るかな?
ガガイモの実が、熟すのは11月頃です。
今年は、コロナウイルスの影響で色々なことが
計画通りいきません。天候も不順です。人生、
先のことが見通せないのはいつものことですが
小さな神様が運んで来るささやかな幸せを集め
て毎日を乗り越えていくしかないなぁと思って
います。
ブドウ(実)
近所にブドウ棚を作っているお宅があります。
そろそろ色付いてきた頃かな?と思ってのぞい
てみるとだいぶ紫色になっていました。
マスカットかな?と思っていたのですが、巨峰
かピオーネのような種類のようです。
普通の住宅の庭に作られたブドウ棚なので趣味
で育てているのだと思われますが、ブドウを育
てるのは難しいのだろうなぁと想像しながら眺
めています。
調べてみるとブドウは、世界で一番栽培されて
いる果物だそうです。そのまま食べるだけでな
くワインや干しブドウに加工する分も含めると
確かにそうなるなぁと納得します。また寒さに
強いことも栽培出来る地域を広げている理由の
1つだそうです。
ブドウの花は、咲いている時はとても小さく目
立たないものですが、実が付き始めると日に日
に大きくなり、粒の表面にブルームという白い
粉を薄っすらとまといます。それが私にはすり
ガラスの表面のように見え、眺めているだけで
も美しい果実だなぁと思うのです。
コスモス(花)
この辺りではコスモスは夏の間から咲いて
います。
ただ、夏の間は背丈が低く、遠慮がち。
秋が近づくと日に日に背が伸びてきます。
まるで遠ざかる太陽を追い求めてすがるよう
に倒れても倒れた所からまた伸びていきます。
葉も茎も細いのにどこにその強い生命力が
あるのかと目を見張るほどです。
涼しい日が続いた、と思ったらまた台風の接近
で蒸し暑くなっています。雨が降ったり止んだ
り不安定な天気が続いています。天気予報で
雨雲の様子を見てもほとんど雲は映っていない
のに突然、風景が真っ白になるほど雨が降って
きたりする。天気に左右されて気分も不安定に
なり滅入ります。
桜色のコスモスは、秋桜の字にふさわしい透明
感の感じられるピンク色です。青空のブルーを
ほんの少しだけ混ぜた桜色。風に揺れるコスモ
スは、どんどんと高くなる秋の空が早く戻って
来ることを願っています。
ツユクサ(花)
一度降り出すと止まなくなる、この地域の雨。
急に元気を取り戻したのはツユクサたちです。
もう今年の花は、終わったと思っていたのに
田んぼの横の土手でゴッソリ、ザックリ花を
咲かせています。
にどんな色でも作れてしまう園芸界ですが、人
間が、手を加えなくてもこんなに美しい青色を
花で再現してみせるなんて脱帽です。
青色は、日の光に当たると退色しやすい色なの
で人工染料が一般的になる前は、藍で染める以
外は難しい色だったそうです。でも、藍の青と
ツユクサの青はやっぱり違います。この青空の
ようなツユクサの色は、この花独自のものだな
と思います。
古くから日本にある花です。その時代から比べ
たら、ずいぶんと自然界の様子も変化したはず
ですが、ずっと美しい青さを保っています。
なんでもない道端で、なんでもないように生き
ているものが、強いのだと教えてくれている
ような気がします。
ナス(花)
野菜と呼ばれている植物の花でも美しいなぁ
と思うものはたくさんあります。
ナスは、茄子紺という色名があるように果実
自体も美しい色をしていますが、畑に咲いて
いる花も独特の紫色できれいだなと思います。
今年は、春に雨が少なかったためナスの皮が
硬く、親達は食べる度に不満を述べています。
歯が弱ってきた年寄りにはなかなか手強いの
かもしれません。皮は、硬くても熱を通せば
ナスの身のトロリとした食感は、なんともいえ
ない美味しさだと私は満足しているのですが。
夏の終わりになると母の故郷では、小さなナス
で浅漬けを作る習慣があり、今年も売り場に小
ナスを見つけると買っては来て漬けています。
父が食卓で一番最初に箸を伸ばすのは決まって
その漬物だからです。塩気の強い漬物でご飯を
何膳も食べるのが子供の頃からの習慣だったの
でしょう。最近は、すっかり食が細くなってし
まった父に、少しでもたくさん食べて欲しいと
いう母の願いも込もっているのです。
今、畑に咲いている花は、いわゆる秋ナスと呼
ばれる美味しいナスに成長する予定の花です。
オクラのレモンイエローの花も素敵ですが、ナ
スの花も捨て難いのは色々な想いが交錯するか
らかもしれません。
フウセンカズラ(実)
散歩コースの途中に昔、小学校だった分校跡が
あります。その反対側は、小さな畑になって
いて早朝から持ち主の女性がせっせと仕事を
しています。畑の周囲には、いつも季節の花々
がきれいに咲いていて、きっと女性は花が、好
きな方なんだろうな、と推測しています。
今の季節は、夏の花がそろそろ終わりになって
きてヒマワリやヒャクニチソウがうなだれてい
る中、フウセンカズラが丸い実をたくさんつけ
始めています。
丸い袋状の果実をつけます。ツル性の植物で、
最近は、グリーンカーテンとしても人気もあり
ます。カスミソウのような小さな花や細いツル
が繊細な印象で暑い中でも涼し気に見えます。
緑色の果実が茶色になると中には、黒地に白い
ハート模様の種が入っています。このハートの
形が、お猿さんの顔に似ているという人もい
ます。
会話を交わしたことはなくても植えている花を
見ると何となく持ち主の人柄が感じられるもの
です。自分が好きな植物を植えている人には、
勝手に親近感を抱いてしまう私なのです。
シュウカイドウ(花)
いつもは通らない小道を入ると久しぶりに
シュウカイドウの花に出会いました。
シュウカイドウの特徴は左右非対称の葉。
片側が大きく、もう片方は小さい変形した
ハート型をしています。明るい日陰を好み
花は公園の花壇などを彩っているベコニア
とそっくりです。それもそのはずベコニア
は、シュウカイドウ科の植物を園芸品種と
して改良したものの総称とのこと。ベコニ
アよりも先に日本に来て呼び名が定着して
いたシュウカイドウはそのまま名前を残し
てもらえたとのことです。
私の住む地域は、例年ならお盆を過ぎると
だいぶ秋の気配が漂ってくるのですが、今
年は、残暑が厳しく続きました。ところが
昨日から急に前線が下がり、雨と共に涼し
い空気が運ばれてきました。あの暑さが
ウソのように涼しいです。
シュウカイドウは、秋の雨に濡れながら
しっとりとした風情で咲いているのが似合
う花だと思います。汗まみれで散歩していた
頃、目に飛び込んできたシュウカイドウは、
雨が近づいていることを知らせてくれる何か
のお告げだったのかなぁ~なんて思ってい
ます。
ホオズキ(実)
庭のホオズキが色付いてきました。
一度涼しさを知った体に台風が持ち込んだ
湿度の高い空気はほとほと堪えるもので夜に
なっても寝苦しいまま朝を迎えました。
ホオズキは、ナス科の植物で、オレンジ色に色
付く袋状の部分はガクが変化したものです。袋
の中には、ミニトマトのような赤い実が入って
いて、その中に沢山の種が詰まっています。
乾燥させてもオレンジ色の袋は色褪せることが
ないのでドライフラワーのようにして冬の間、
部屋に飾っておくと形の愛らしさとあいまって
温かみのあるアクセントになってくれます。
例年、ホオズキが色付く頃は、夏の終わりを感
じるのですが、今年は一度弱まった暑さがぶり
返しました。フッとカレンダーの旧暦を見ると
まだ7月半ば!今年は、新暦と旧暦がかなり
かけ離れてしまっています。新暦の8月が、
終わろうとしているのに、もしかしてこれから
が夏本番⁉ どうか暑さが静まりますように。
ゴーヤー(花)
夏の初め頃、スーパーで買って来たゴーヤーを
食べようとして縦半分に切ると中の種が真っ赤
に熟していました。
種の周りの赤い部分は食べると甘いとテレビで
見たことがあったので、これは完熟しているに
違いないと思いました。周囲の可食部分は、
味噌炒めにして食べてから種の赤い果肉を丁寧
に洗い、しばらく水に漬けて沈んだ種だけ4粒
を紙コップに土を入れて蒔いてみました。
南国の気候とあまりにも違う、この北国で、夏
とはいえ芽が出るのかな?と思っていましたが
4粒とも1週間以内に出揃ったのでその後、庭
の一角に植えたところ、ちゃんと花も咲き始め
ました。今年の酷暑がゴーヤーには幸いしたの
でしょう。
花が咲くと欲が出て、今度は実を実らすことが
出来るかもしれない、と思うようになりました
が、圧倒的に雄花の咲く確率が高くなかなか
雌花が咲きません。先日、やっと雌花が咲いた
ので雄花の花粉をつけて人工授粉したところ
小さなゴーヤーの赤ちゃんが見えてきました。
果たして食べられるほど大きくなるかはわかり
ませんが、暑さにやられてばかりでは悔しいの
でこんなささやかな楽しみを味方につけてなん
とか頑張っています。