ユキヤナギ(花)
父が、ユキヤナギにも香りがあるとテレビで言
っていたよ、というので庭に行って確認してみ
ました。
すると確かに良い香りがします。今までユキヤ
ナギの香りを意識したことがなかったので少し
意外な感じがしました。
ユキヤナギは、厳密にはヤナギの仲間ではなく
バラ科の植物です。ヤナギのように枝が柔らか
くしなっている様子からヤナギと名前がついた
ようです。小さな真っ白い花を枝一面につけま
すが、1個1個の花をアップで確認すると確か
にバラ科のウメやサクラの花に共通する特徴を
備えています。
花が咲き出す時期は、だいたいサクラが咲く頃
と一緒でせいぜい1.5mくらいにしか高くなら
ないのでサクラの下に植えてあるとピンクと白
のコントラストが大変美しく、絵になる風景と
なります。
サクラが、花吹雪を散らす頃、ユキヤナギも忠
実な家臣のように白い花びらを散らして、後を
追うように去っていくのです。
オオイヌノフグリ(花)
春先は、寒さに縮こまっていたオオイヌノフグ
リも今はのびのびと至る所に咲いています。
緑の中に点々と青い小さな花が散りばめられて
いる様子は、まさに私好みの花模様。
もうずいぶん、長いことスカートというものを
はかなくなってしまいましたが、こんな模様の
スカートやワンピースがあったらいいなぁと
しばし妄想します。
不思議なことに若いお金のない頃は、色々な服
が欲しくてとっかえひっかえ沢山のものを所有
していました。でも、今は動きやすいシンプル
な服が各シーズン数着ずつあれば満足だと思っ
ています。
それだけ年を取って体力がなくなったというこ
とでしょうか。でも、私より年長の両親たちは
私より遥かに大量の着もしない衣類を持ってい
るのはなぜなんだろう?(所有していることす
ら忘れられてしまっている服も多々あり)
大量生産、大量消費の夢の果てに今の私たちが
あるということでしょうか?
私は、ミニマリストでもなんでもありませんが
所有しなくても自然はいつでも私に十分なもの
を与えてくれていると今はわかっています。
ジンチョウゲ(花)
若い頃、住んでいた町ではジンチョウゲが咲く
のは2月下旬から3月上旬ごろでした。
今住んでいる町では、3月下旬から4月上旬。
丁度、1ヵ月遅れです。
そもそも常緑樹のジンチョウゲにとって、この
寒く乾燥する地方は、厳しい環境です。
日本へ渡って来たと言われています。ツヤツヤ
とした葉は水分をたっぷりと含んでいる証拠で
温かい湿潤な気候で育つ樹木の象徴です。
春、気温と湿度が急上昇して来ると共に花を開
き、甘く気怠い香りを周囲に漂わせて春の訪れ
を周囲に知らせる花です。
本来、栽培に向かない当地にも少しずつジンチ
ョウゲが増えているのは、この香りが春を待ち
望む気持ちを代弁しているからではないか、と
私は想像しています。
松任谷由美さんの「春よ、来い」で見事に表現
されているジンチョウゲの咲く情景は、関東地
方を中心としたものだと思われます。しかし、
歌というものは、人々に自分の庭でも同じよう
なイメージを再現したいと思わせる、不思議な
力を持っているようです。
タチツボスミレ(花)
雑木林の陽だまりでは、今年もタチツボスミレ
があちらこちらで花を咲かせています。
いったい今までどこに隠れていたの?と思うほ
ど温かな斜面のあちらこちらに顔をのぞかせて
います。
タチツボスミレを初めて見たのは、光化学スモ
ッグが問題になるような町から同じ県内でもか
なり、のどかな町に引越した頃でした。
それまで住んでいた家の裏にも小さな竹藪があ
り、それなりに小さな自然が身近にあったので
すが、新しい家のすぐ隣は、大きな雑木林が連
なっていました。
小学校低学年の私は、これまで以上に広い自然
に魅了され、毎日、雑木林の探索に明け暮れま
した。初めて迎えた春、野生のスミレというも
のに生まれて初めて出会い、それがタチツボス
ミレという名前で、無尽蔵にあることがわかっ
た時の嬉しさは、今でも憶えています。
そのうち種が何かに運ばれて来て、庭でもタチ
ツボスミレは咲くようになりました。春の一番
身近な花として、今では何十年も一緒に暮らし
ています。
乾いた都会では見ることが、出来ませんが、日
本の野山には必ずある、このスミレと毎年、春
を祝えることは私の小さな幸せです。
シダレザクラ(花)
月が替わり、両親のかかりつけ医に行くと駐車
場が、混んでいていつもと様子が、違っていま
した。クリニックという名称の割に、建物が、
大きく、最近は流行っていない様子が、ありあ
りとわかり、いつもガラーンとしている病院。
今回は、薬だけではなく診察も受けるというの
で私は隣のスーパーで買い物をして入り口で待
ち合わせていると父の表情が明らかに険しくな
っており、怪訝に思っていると、とうとうその
病院が破綻してしまったとのこと。小心者の父
は、早く帰りたい!と焦っていますが、薬局が
激しく混雑していて薬の順番がなかなか回って
来ないことに苛立っています。
正確には、病院は、別の法人が引き継ぐようで
す。従って、私たち患者には特に支障はないは
ずですが、父は、かなり動揺しています。良く
ないことが起きた場所にいると、自分にも良く
ないことが伝染すると信じているのです。
病院が破綻するなんて都会ではよっぽどのこと
でしょうが、人口が減っている地方では、これ
から益々増えるんだろうなぁと私は父と反対に
冷めた目でとらえています。
駐車場の入り口で咲き誇っている、満開のシダ
レザクラが、場違いなほど物悲しく目に焼き付
いた日でした。
ショウジョウバカマ(花)
つい1週間前までは、ロゼット状の葉の中心
が、ほんのりピンク色に色付いただけでした。
それが、ここ2,3日の暖かさでグングンと
茎を伸ばしてあっという間に開花しました。
昨年、大きくなり過ぎた庭の2株を分割して
裏庭に移植しました。上手く根付いたか心配
していましたが、無事花も咲き安心しました。
野生のショウジョウバカマを見なくなったので
もっと増えたら雑木林に移植しようかと思った
りもしたのですが、先日記事にしたカタクリを
見に行ったら誰かに掘られたようで跡形もなく
なっていたので植えてもダメかなぁと思ってい
ます。
都市部からここへ越して来て驚いたのは、ここ
の人が自然環境を大事にしていないことです。
お金になるならなんでも売り払ってお金に換え
てしまう感じなのです。山野草や山菜ばかりで
なく、防潮堤を作る材料として近くの山は日々
削り取られ、ダンプカーで海の方へ運ばれて
います。そのうち津波より恐ろしいことが起こ
るのではないか、と痛ましい山肌を見る度に恐
怖で胸がふさがれるのです。
シダレヤナギ(花)
歩いていると公園のシダレヤナギの木が芽吹い
ているのが見えました。
ついこの間までは、枯れ枝のようだったのに萌
黄色に染まっています。近づいてよく見ると葉
だと思っていた萌黄色の塊には花もついていま
す。花は、ネコヤナギに似ていますが、ネコヤ
ナギのような産毛はついていません。
上から下までズラッと並んだ花はゆっくりと風
に揺れていて見ていてあきない心地良さがあり
ます。きっとこれも1/fのゆらぎのためなの
でしょう。
1/fのゆらぎとは、人の心拍、小川のせせら
ぎ、ロウソクの炎の揺れ、木漏れ日の瞬きなど
不規則だけれど心地良いリズムのことですが、
それらを外界から感じると、人間の生体が共鳴
して自律神経が、整えられ心地よく感じるそう
です。
芽吹いたばかりのシダレヤナギとサクラの花の
取り合わせは、春の好きな風景の1つです。サ
クラの花もようやくほころんで、パステルグリ
ーンとピンクの目に優しい共演も、もう間もな
くです。
カタクリ(花)
サクラの蕾がピンク色になり始めた頃、雑木林
の足元をよく見ると日当たりの良い斜面にカタ
クリの花を見つけることが出来ます。
紅紫色の花びらをクルリと茎の方まで反転させ
て開く花は大変特徴的です。
雨上がりに家から一番近い雑木林に行ってみる
と先週見た時より花の数が増えていました。
冬から初夏へ一気に移動したような気温差に敏
感に反応して急いで花支度を始めているようで
した。
カタクリを見ていると近所の男性らしい人に声
をかけられました。さきほどすれ違った人のよ
うだなぁと思っているとどうやらそこにカタク
リの花が咲いていることを教えてくれようと、
わざわざ引き返して来てくれたようです。私が
すでにカタクリに気付いて見ているのがわかる
と「あ、そうそう、あっちにショウジョウバカ
マも咲いているよ」と言って去って立ち行きま
した。返事する間もないほど素早く行ってしま
ったので後ろ姿に「ありがとうございます!」
と慌ててお礼を言ったのですが、滅多に人と行
き交うことのない雑木林でちょっと緊張した
出来事でした。
コブシ(花)
雨上がりの晴天でハクモクレンとコブシの花が
満開になりました。
時期は、ほぼ例年通りです。どこの地方でもハ
クモクレンの後にサクラが咲く。これが自然界
の約束のようでサクラの蕾も膨らんでいます。
ハクモクレンとよく似た花に、コブシがありま
す。両方ともモクレン科の樹木で花の咲く時期
もほぼ同じ頃、パッと見た感じは同じ花に見え
ます。特に蕾が開くまではそっくりです。
コブシは、日本原産の落葉広葉樹です。
ハクモクレンと比べるとコブシの花の方が、や
や小さく、全開になっても花弁の根元がくっつ
いていることや開花した花のすぐ下に小葉がつ
いていることで見分けます。また樹形の印象も
コブシの方が全体的に華奢な印象を受けます。
元々は、山地のやや湿った場所に生える木でし
たが、最近は落葉が少ない点が好まれ、都会の
公園や街路樹としても人気があります。日本原
産のモクレンということで英語では、Kobushi
magnolia と呼ばれます。
コブシは、ハクモクレンよりも花が咲き進むの
がユックリです。ハクモクレンが、散ってサク
ラが咲き出してものんびりマイペースで花を咲
かせ続けています。何かと気忙しい春に、自分
のペースを守ることを思い出させてくれる花が
コブシです。
ウメ(花梅)
日本列島の各地からサクラが満開の便りが聞
かれる頃、我が家の庭ではハナウメが満開に
近づいていました。
八重咲の花は、ぽってりとしてほんのり紅色
の小さなお餅を散りばめたようです。
この梅の木は、父が、将来たくさんのウメの
実がなることを期待して越して来たばかりの
頃、植えたものです。
ところが、花はきれいでも実はゴツゴツして
硬く、梅干しにしてみても美味しくならない
ことがわかってガッカリしたのです。
子供の頃からおやつに梅干しを食べていた、
というほど梅干しが大好きな父にとっては大
ショックだったようです。植木屋に騙された
などと悪態をついていますが、どこかで品種
のラベルの入違いがあったのかもしれません。
梅干しには向かないと判明した頃には、梅の木
はしっかりと根を張っており、今さら引き抜く
ことも出来ないので毎年、花を楽しむだけにな
っています。
暑い最中、梅干しを漬ける作業は、老いた母に
は重労働です。私も手伝っていますが、いつま
で続けられるかわかりません。何事にも執着が
激しい父ですが、母のことを思うとこれで良か
ったのでは?と内心、私は思っています。