サラサドウダン(実)
5月に釣鐘型の可愛い花をつけていたサラサ
ドウダンが、今年はたくさんの実をつけてい
ます。
淡いクリーム色の花冠に紅色のスジ模様が入
る様子が、布地の更紗模様を連想させること
からサラサドウダンという名前がついたこの
花はドウダンツツジの仲間です。
花は、咲いている時は口を下向きにしていま
すが実がなると上向きになり、果実は縦に裂
けるようになっており中に種が収まっていま
す。花の頃は、ミツバチなどのハチの仲間が
盛んに訪れているので結構蜜を持っているの
でしょう。
サラサドウダンは、葉の紅葉も美しいので最
近は庭木としても人気があり散歩をしていて
もよく目にする木です。あまり横に広がらず
すらりと背の高い木に成長するため狭い場所
でも楽しめるからでしょう。
秋になって落葉した枝に実がなっているのが
見えたので写真を撮ろうと思っても枝が高く
なかなか良い被写体に出会えなかったのです
が、ようやく低い木に出会うことが出来まし
た。たくさんの果実に混ざって、来年の花芽
もちゃんと準備されています。ゆっくり休ん
でまた来年可愛い花を見せてね、と声をかけ
て家路に着きました。
フユザクラ(冬花)
今年は秋からの続きで気温が、少し高めの日
々が続いています。雪がちらつく日もありま
したが、まだ積もった日はありません。その
ためか、天気にめりはりがなく雨の日が多い
です。
午後から晴れてきたので近くのフユザクラを
見に出かけました。花は、湿度が高い方が開
くようで高い枝にはたくさんの小さな花が開
いています。今年は気温が高めとはいえ冬に
あえて花を咲かすなんてずいぶんと思い切っ
たものです。
ソメイヨシノの花を更に小さくした花は、ゆ
っくりと順番に咲くためしばらくの間楽しめ
そうです。午前中の光で撮影出来たらもっと
明るい写真が撮れたのでしょうが、午後から
の冬の光は鈍く寒々しい写真になってしまい
ました。
フユザクラのある場所は、夏でもかなりジメ
ジメした日陰で地面には苔が生えていて足元
が滑るようなところです。人間が植えた木で
はないので多分このような環境を好んで生え
ているのでしょう。冬に咲いた花には実がな
らず、春に咲いた花には実がなるとのこと。
その実を蒔けば、増やすことが出来るそうで
す。
冬にも花を開くことを選んだ理由をフユザク
ラに問うても、もちろん返事はありません。
ハギ(実)
晩夏から初秋にかけてたくさんの花をつけて
いたハギが、小さな黒い実をつけて揺れてい
ます。
たくさんあった葉もほとんど風にもっていか
れ、枝には菱形の種だけが残されています。
公園など整備された所に植えられたハギは、
今の時期になると地面スレスレで剪定されて
さっぱりとした身なりになります。そのため
実をつけた姿を見ることはあまりありません
が、ここのハギは自然のままなので夏に伸び
たままの姿で冬を迎えています。
ハギの種は、しばらくすると自然に地面に落
ちます。枝についている状態では、枝が細過
ぎて小鳥でも止まれませんが、地面に落ちれ
ばスズメやエナガなどが安心してついばむこ
とが出来るようになります。種の多くは、小
鳥たちの冬の貴重な食料となって消えていく
運命にあるのです。
多くを与え、多くを望まないことでハギは、
適度な数の子孫を保っていくのです。
全世界を自分たちだけで支配しようなんて愚
かなことは、これぽっちも考えていません。
レンズ雲
夕方、ふっと空を見上げるとレンズ雲が浮か
んでいました。
レンズ雲は、観天望気では悪天候の前兆とい
われています。自然の現象や生物の行動の様
子などから天気の変化を予測することを観天
望気と呼びますが、レンズ雲もその中の1つ
です。
レンズ雲は、主に山の周辺で見られる雲で山
頂付近を湿った空気が昇る際に断熱冷却され
て出来る雲です。傘雲または、笠雲などとも
呼ばれます。
私の住む場所は、せいぜい標高100m前後の
低い山ですが、それでも下の地域に比べると
天気は微妙に異なります。常に風が吹き、天
候も悪い方へ傾く傾向が強い場所です。朝起
きた時に晴れていても朝食を食べている間に
ミルミル黒い雲が広がってきて雨になること
もしばしばあります。広い平野にある街で長
く育った私は、冬は一日中晴れている感覚が
身についてしまっているので目まぐるしく天
候の変わるここの環境に未だに馴染むことが
出来ません。
夕焼けに下から照らされたレンズ雲は、見て
いるだけなら美しい雲です。窓の外に大きく
横たわる姿は、大きな空母のようにも見えま
す。ゆっくりと過ぎて行く雲を見ながらしっ
かりと戸締りをしたのでした。
ツツジ(霜華)
庭のツツジの葉に毎日のように霜の花が咲く
ようになりました。
空気中の水分が凍って葉の表面に付着するこ
の現象は氷の結晶の一種です。
一枚一枚の葉に丁寧に粉砂糖をまぶしたよう
についた細かく白い氷は朝刊を取りに出た私
の目をしばし釘付けにします。
多くの植物は葉に霜がつくと活動が低下して
中の水分が凍り、栄養分が滞って枯れてしま
います。落葉樹が秋になると葉を落としてし
まうのはそれを防ぐための予防手段の一種で
す。一方落葉しない針葉樹は、葉の表面を蝋
のような物質で覆うことによって中の水分が
凍るのを防いでいます。それぞれが工夫して
寒さから身を守っている様子を見ると植物の
知恵にはほとほと感心させられます。
春に花を咲かせる一般的なツツジは、常緑性
です。葉が薄く触るとカサカサと乾いた感触
なのは、冬の間枝からの水分の供給を極限ま
で絞って身を守っているためです。
ドライフラワーのようになった葉に朝日が当
たって粉を葺いたように光る霜華は、冬の朝
だけに見られる束の間の美です。
ツバキ(花)
朝の冷え込みが一層きつくなっています。
それでも早咲きのツバキが、ポツポツと咲い
ているのには感心させられます。
ツバキは、品種改良が盛んな樹木で今ではあ
りとあらゆる色と形の花があります。大きさ
も様々でおちょこのような小輪咲きから牡丹
のような大輪咲きまで本当に多種多様です。
毎冬、散歩の途中で見るこのツバキは、小輪
で白地に濃いピンク色の絞り模様が入る花で
す。模様が入る位置や分量は、同じ木でも一
輪ごとに違い1つとして同じ模様の花はあり
ません。緑色というより黒に近い葉は艶々と
光り、花を一層引き立てる効果があります。
ツバキの足元には、咲き終わった花がたくさ
ん落ちています。花びらが散るのではなく、
花ごとポロっと落ちてしまうこの姿は武士の
世界では首を切られた姿を連想するというこ
とで嫌われていたそうです。
でも、深々と冷えた冬の空気の中で静かに花
を開き続けているツバキの姿は、どこか孤高
の武士を私に連想させるのです。
ヤクシソウ(実)
11月に最後の花を咲かせていたヤクシソウの
前を通りかかると花は全て終わって種になっ
ていました。
種の先はタンポポのような綿毛がついていま
すが、タンポポのように大きく広がってはい
ません。この調子では種はそれほど遠くには
飛んで行けそうにありません。もう何度か霜
がおりましたが、そのうち雪が降れば枯れて
土に還ってしまうことでしょう。その後には
これらの種が母株のあった場所にまた芽を出
すのです。まるで代々土地を継承していくよ
うに、また来年も人間が環境を破壊しない限
り同じ場所で命をつないでいきます。
ヤクシソウの周囲の木々はほとんど落葉して
すっかり寂しい風景となりました。夏の間あ
んなに茂っていた草も今はほとんど枯れてし
まいました。落ち葉に埋もれたヤクシソウも
あとわずかの命。種という子供たちは、長い
長い眠りについて来春暖かくなるまで土の中
でゆっくり休みます。
種が目覚めるためには、一度低温期間を経験
する必要があります。冬は、春が来るために
必要不可欠なものなのです。
今日の空94
冬が来るとこの辺りは、晴れている日はたい
てい強風が吹き荒れます。
スマートフォンには、度々電車の遅延通知が
送られてくるので都会育ちの私は、ここの人
達はどのようにして学校や職場へ行き来して
いるのだろう?と心配になります。
大人は、今では車移動が主体になっているか
らまあ、なんとかなるのかもしれませんが、
一番割を食っているのは高校生ではないか?
と想像しています。身近に中高生がいないの
で詳しいことはわかりませんが、ここの学区
は、公立中学に通う人は朝晩スクールバスに
乗って登校しています。部活動などをする人
は、どうなっているのだろうか?と思うので
すが多分そういう人は親が個別に送迎してい
るのでしょう。バスの時間に合わせて学校生
活の送っているのでしょうから友達と時間を
忘れておしゃべりなんて許されないのかな?
高校生になると親の送迎と1時間に1本のバ
スあとは自転車で通学をやりくりしているよ
うです。更に、電車を使うとなるとこんなに
しばしば遅延や不通になるようでは冬の間の
通学は毎日綱渡りのようです。
穏やかな日の飛行機雲の航跡を眺めながら、
せめて学校がある日はこんな日が続くとい
いのに、と思うのでした。
モチノキ(実)
午後3時過ぎに町内の集会所の前を通りかか
ると、敷地内のモチノキに実がビッシリつい
ていました。
丁度、西日が当たる時間で冬とはいえ眩しい
くらい照り返しがきつくなっています。
これまでここにモチノキがあったことに全く
気づいていませんでした。ましてや、こんな
にたくさんの実をつけていたとは。
小学生の女の子が2人自転車に乗りながら周
囲をグルグル回っています。何が楽しいのか
笑いながら自転車を漕いでいるので何だかこ
ちらまで楽しい気分になってきます。
女の子たちはモチノキのことは全く眼中にあ
りません。ただ、お互いが一緒にいることが
嬉しくてはしゃいでいるようです。
私にもきっと、あんな無邪気な時代があった
のだろうなぁ~と思いました。複雑な人間関
係も難しい勉強も仕事もない、ただ遊び友達
と戯れている時間。
豊かに実るモチの実と女の子たちのを見比べ
ながら過ぎてしまった遠い時間を懐かしく思
い返していました。
ハナミズキ(実)
雲ひとつない青空にハナミズキの実が光って
います。
ハナミズキは、家の近所ではよく見られる庭
木ですがこんなにたくさんの実がついている
のは珍しいです。風に飛ばされてもう葉は一
枚も残っていませんが、赤い実と来年の花芽
が目立っています。
この日は、年に10日あるかどうか?という穏
やかな小春日和で母と一緒に散歩に出かけま
した。風も程よく歩いていると少し汗ばんで
くるような感じでしたが、心が晴れ晴れとし
てくるような日でした。
こんなにたくさんなった実もそのうち鳥たち
に食べられてしまうでしょう。なぜ、この木
だけたくさんの実がついているのだろう?と
思いましたが日当たりが良い以外は取り立て
て変わりがないように思えます。でもきっと
何かハナミズキが心地よいと感じる環境が整
った場所なのだと思います。
風に吹かれている花芽が開くまで約5カ月。
その頃には赤い実は、ひとつ残らず姿を消し
て青空をバックにパッチリと開いた花びらが
見られることを今から心待ちにしています。