キノコ22
先週は、荒天が続いてなかなか散歩に出られ
ませんでした。散歩といっても私の場合、家
の近所の雑木林や野原をほっつき歩いている
だけですが。
相変わらず天気はあまりパッとせず、黒い雲
が大きく広がっていましたが、寒さが緩み、
風もなかったのでお昼前の小一時間、今のう
ちと出かけてきました。
久しぶりに池の側の野原に足を向けると、夏
の間は草ボーボーで足を踏み入れることが出
来ない場所がなんだかこざっぱりとしていま
した。勝手に種が飛んできて生えてしまった
何かの若い木は根元で切られ、広々としたス
ペースになっています。
奥の方の細い水の流れをもっとよく見たくて
少し足を前に進めるとグチャっとした泥を踏
む感触が足元から感じられました。なるべく
乾いた所を選んで流れの側まで到達すると流
れは、小川と呼ぶにはまだちょっと早い段階
でした。
満足して道路に戻ろうとすると切られた若木
の切り口に白い扇形の綿のようなものがたく
さんついているのに気が付きました。
名前はわかりませんが、キノコの一種だと思
いました。もしかしたら粘菌の一種かな?
どちらにせよこんなに寒くて風が吹きすさぶ
日が続いても命の痕跡を確認出来れば帰りは
ルンルンの私なのでした。
マサキ(実)
今年もマサキの実が朱色に色付いてきまし
た。
一年中艶のある葉を茂らせているマサキは
生け垣として人気のある樹木です。日本の
庭では生け垣には常緑樹が使われることが
など一年中緑の葉を絶やさない木々が人気
です。マサキもそんな緑の美しい木のひと
つです。
12月に入ると朱色の実が目立つようになっ
てきます。日に日に昼間の時間は短くなり
天気の悪い日も多い12月は、この辺りで1
年で一番辛く厳しい季節です。冬至を過ぎ
れば少しずつ日脚が伸び、気温が低い日は
続いても不思議と気持ちは上向いてくるの
に。
鬱々とした気持ちで枯れ果てた世界を散歩
していると割れた赤い実の中からサンゴの
ような朱色の種をのぞかせたマサキが、私
の視線を誘います。寒さと暗さで縮こまっ
ていた心にポッと明るい火を灯すのです。
マサキの実を見るとあと少しで今年も終わ
り、新しい年が目前に迫ったことを毎年感
じます。光の春は、もう始まっています。
ノギク(実)
晩秋まで頑張って咲いていたノギクもとうと
う種をつけた姿になりました。
フワフワの産毛に覆われた種は羽毛のようで
ちょっと温かそう。雪が降るようになって一
段と寒く感じるようになった私はいいなーと
羨ましく見ています。実際は、ノギクから見
た私の方がずっと羨ましいのかもしれません
が。
北海道の人から見たらこれくらいの寒さで根
を上げているなんて笑われてしまうのでしょ
うが、やっぱり寒いです。これから1月いっ
ぱいは、寒いし天気が悪い日が続きます。
寒くなると毎年のことながら人間も冬眠する
動物だったらいいのに、と本気で思います。
せめて1月~2月までは眠り続けたら地球の
温暖化も少しはマシになるだろうし、私自身
も食べないで眠り続けたらダイエットになる
のでは?な~んて妄想してしまうのです。
実際は、寒さに震えながらトイレやお風呂を
掃除し、乾かない洗濯物をあちらこちらへ移
動して雲の後ろから出て来ない太陽を恨めし
気に見上げている毎日です。
ナツツバキ(実)
夏に清楚な花を咲かせていたナツツバキは、
今は茶色い硬い実をつけています。
この実は柔らかい花からは想像出来ないくら
い硬く、手で割ろうとしても簡単には割れま
せん。
冬の初め頃になるとナツツバキの実は先端が
自然に開いて割れてきます。あんなに硬かっ
た実が、空気の乾燥と共に少しずつ開いてく
るのです。自然の摂理とはなんとも不思議な
ものです。
この果実の中には平べったい種が入っていま
す。外側の硬い殻自体は、春まで残っている
ことが多いですが、中の種はいつの間にか鳥
や風に運ばれて春までにはなくなってしまい
ます。
夏の間、美しい緑色をしていた大きめの葉は
黄色から橙色に色付いて冬には全て落ちてし
まいます。樹皮は少しずつ剥がれ落ちてサル
スベリの幹のようにツルツルしてきます。
寒い冬を裸で過ごすなんて寒くないのだろう
か?と思うのですが、真っ直ぐに天を衝く幹
は枝の先端に冬芽を用意してただひたすら春
を待っているのです。
今日の空96
明日は雪、と盛んに天気予報で報じている空
を見ると雲が竜巻のように巻き上がっていま
した。
写真を撮ろうと窓を開けると鳥が飛び立ち、
それがゴマ粒のように点々と重なりました。
少し前まで降っていた雨はやんで気温はまだ
それほど下がっている感じではなかったので
すが、不穏な雲の様子に身震いしました。
翌朝起きてそーっとカーテンをめくって外を
のぞくと薄っすらと雪化粧しています。とう
とう本格的な冬の到来です。
明け方から降り始めた雪は、太陽が昇っても
遮るように空から次々と舞い降りてきます。
太陽の前をチラチラと雪片の影が絶え間なく
通り過ぎていくのです。
前日に灯油を2缶追加購入しておいてよかっ
たとホッとしました。いつもは灯油は、父が
担当していて巡回販売から買っていますが、
今週は買うはずでは?と思ったのに、まだあ
る!と言い張るので買わないでいたら勘違い
していたようであと半缶しかなく、慌ててガ
ソリンスタンドに買いに行ったのです。
石油ストーブの上で焼ける焼き芋の匂いを感
じながら油断大敵だなぁ、と思いました。
ソシンロウバイ(蕾)
待ちに待った、種から育てていたソシンロウ
バイに蕾がつきました。
ここ数年は、毎年のようにまだ咲かないのか
なぁ~と年末になると期待と落胆を繰り返し
ていたので先日蕾が10個ほどついているのを
見つけた時は満足感でいっぱいでした。
ロウバイは、落葉樹なので花が咲く頃には葉
は散ってしまいます。でも、意外と枝から葉
が離れるのは遅く蕾は隠れて目立ちません。
黄葉した葉が黄色い蕾を保護色のように守っ
ている感じです。
物の本によるとロウバイは、種から7~8年
くらいで花が咲くと書かれていました。我が
家のロウバイもかれこれ8年くらい経つので
やはりそのくらいかかるものなのでしょう。
園芸店に行けば、今の時期ロウバイの苗木は
たくさん売られています。8年もヤキモキし
ながら待つなんてなんて気が長い人なんでし
ょう、と母はあきれています。でも、ピーナ
ツのような種から本当に芽が出て小さな苗が
1年、1年成長していくのを見ることの出来
た時間は何にも代えがたい時間だったと私は
思うのです。
ミツマタ(蕾)
春にミツマタが咲いていた庭を通りかかると
すでにしっかりとした蕾が出来ていました。
花が咲き出すのはこれからまだ3ヵ月くらい
先ですが、もう準備万端といった感じです。
春に花を咲かす花木の多くは秋に葉を落とす
と同時に花芽の準備を終えています。花が先
に咲いてから葉が出る種類が多いのも春の花
木の特徴の1つです。
ミツマタも黄色いボール状の花の塊を咲かせ
た後、枝の先端に葉を広げて春から秋までを
過ごします。あまり大きくならない落葉低木
のため個人の庭で楽しむには最適の庭木です
が、元は紙の原料として盛んに栽培されてい
ました。花は、黄色いものが一般的ですが、
最近はオレンジ色のものもあり、これも庭木
として需要が高まった結果改良が進んで生み
出された新しい花です。
ミツマタをはじめとした樹皮から作られる和
紙は、大変丈夫なことで知られています。和
紙で作られる衣類を紙子(かみこ)と呼びま
すが、この衣類は風を通さず軽く温かいため
かつては大変重宝したそうです。
これから益々寒くなる冬を乗り越えていち早
く春を告げてくれるミツマタは、花だけでな
くもっと実用的な面で活躍してくれそうな気
がします。
ドングリ(実)
冬の雑木林を歩くと地面には無数のドングリ
が、転がっています。
ほとんど木々は葉を落とし、無数の落ち葉と
小枝と共にドングリはむき出しのまま横たわ
っているのです。これだけたくさんのドング
リを実らせた親木はすでに眠りにつき、あと
はお前たちは好きにしなさい、というように
静まりかえっているだけです。
木の一生を観察していると時々羨ましく感じ
ることがあります。親木は子孫を残すことに
一生懸命ですが、種が出来たらそれ以降は素
っ気ないほど子供たちを手放しているように
見えるからです。風や虫や鳥に運ばれて自由
に生きればよい、と干渉はしません。植物に
は感情というものがないのだから当然ですが
私は、時々それが強烈に羨ましく感じるので
す。
我が家の両親が過干渉なのは生まれた時から
なのでもう馴れっこだろう、と他人は言いま
す。でも、そんなことはないのです。心の底
では毎日ほっといて欲しいとウンザリしてい
るのです。子育ては終わったのだからもっと
他の物事に目を向けて自分の人生をそれぞれ
愉しんで欲しいと思っています。子供を持た
ない私の我儘なのかもしれませんが、そう思
ってしまうのです。
今日の空95
先週は曇り空ばかりのはっきりしない天気が
続きましたが、今日は久しぶりに晴れ。
その代わりものすごい風が明け方から吹いて
います。おまけに気温も上がらず風と一緒に
細かい雪が吹きつけてきます。
昨日からまた鼻風邪をひいてしまったようで
イマイチ調子が悪いです。先週末、親に付き
合ってデパートに行った疲れが出たのかもし
れません。
父は若い頃、デパートと付き合いのある業界
で働いていたせいかとにかくデパートが好き
です。父の世代にとってはデパートは華やか
で夢を売ったり買ったりする所だったからか
もしれません。そこに行けば、自分も若くて
活力に溢れた気持ちに戻れるような気がする
のかな?
今、デパートに行っても私の目には何だか古
びて寂れている様子しか感じられません。デ
パート自体が過去の遺物のように見えてしま
います。コロナ禍でここ1年ほどは行くのを
ひかえていましたが、そろそろ行っても良い
のでは、と思い出かけて行ったのが先週でし
た。
コロナの影響で若い人たちは益々ネットショ
ッピングで買い物を楽しむようになっていま
す。デパートは、父たちの世代と共に去って
行く雲のようだなぁと思いながら見つめてい
ました。
ハボタン(葉)
町内の園芸同好会と小学生たちが、今年も日
時計の花壇にハボタンを植えました。
この場所は毎年春から秋まではベコニアとガ
ザニア、冬から春まではハボタンが植えられ
ています。
あまり日当たりも良くないこの場所になぜ日
時計が作られているのかわかりませんが、円
形の花壇は1/4ずつに区切られて4色のハボ
タンが植えられています。冬は、2日と晴天
が続かないこの地域で寒さに耐えられる植物
は限られており、ハボタンもその中の貴重な
1つです。時には雪が積もる日もあり、雪の
綿帽子をかぶってジッと耐えている様子は健
気で応援したくなります。
ハボタンは、青汁などに使われているケール
の仲間です。日本に入って来たのは案外古く
最初は食用として渡来しましたが、美味しく
ないということで普及しませんでした。とこ
ろが、冬の寒さに当たると美しく発色するこ
とと耐寒性があることから江戸時代中期以降
品種改良が進み今では海外にまで広まってい
るそうです。
弱い冬の日差しの中で本当は花ではないのに
花の代役を務めているハボタンの花言葉は、
祝福、愛を包むです。